金剛山採集記〜ダイヤモンドオサムシを狙う旅〜
 



9時45分頃、神戸駅改札に到着してながみねさんと合流。
ながみねさんはやたらとでかいリュックと発電機を改札内において、コーナンに行くらしい。
で、僕らの荷物は改札内において僕が見張りを務めたのだが、これがなんとも苦痛であった。
まず、通行人が好奇心をあからさまにしてじろじろ見てくる。
中には嘲笑を隠さない人も・・・。
よっぽど、「どうぞ気になさらないでください、暇人さん達。」と言ってやろうかと思ったが、めんどくさいのでやめた。
途中で、訛りのある日本語を話すおじさんに「これは何ですか」と聞かれて発電機の説明をしたら納得したらしかった。
あんなふうに率直に聞いてくれりゃ嘲笑に耐えずに済むのに・・。
50分ほどでながみねさんが帰ってきて色々あり、12時5分に新今宮着。
さらに5分ほどしたら、この前エゾヨツメとりに行ったときにお会いした人―『俺人虫さん』と呼ぶ―が到着して、なんだかんだで目的の駅に着き、アシナガグモをいじったりした後二人は買い物に行った。
つまり、またしても僕は見張り番というわけである。
一時間ほどすると彼らが帰ってきてバスに乗った。
降りると山の心地よい空気が肺に流れ込み、何かしみじみとしたものを感じる。
そっからは歩いてロープウェイ乗り場まで行くのだが、途中で頭だけで動いているミヤマクワガタを発見。
酷い姿でも死んでいるのなら苦痛がないので大丈夫だが、酷い姿になってもなお生きているのを見ると救われない気持ちになる。
生命力って強過ぎても弱過ぎても欠点になるんだなぁ。
そんなこんなで重い発電機を引きずって(僕は発電機を引っ張ることを命じられた)ロープウェイ乗り場に着いた。
10分ほどで発車し、4分ほどで着いた。
葛城のそれよりも急傾斜でなかなかスリルがある。
しかも、ドアの隙間から指を出したり出来たし。
あれじゃ、こじ開ける事も可能だな。

降りて発電機を引っ張っていると、職員のニーチャンが「それ、ガソリン式の発電機ですよね?本当は乗せてはいけないんですが。」と言う。
「帰るときは乗せないで歩いて降りろ」みたいなことも言われたらしいが、よく聞こえなかった。
とにかく歩いてキャンプ場に着き、バンガローに入った。
「来た時より美しく」という看板が虚しく立っていたが、絶対無理。
踏み潰された昆虫が後に残るはずなんだから。
バンガローは昔、家族で泊まったことがあるが、今回のは二階もあってなかなかクオリティが高い。
一人2000円なんて信じられんなあ。
早速お二方はライトの設置に取り掛かり、僕は邪魔にならないようにその辺をぶらぶらしていたが、そのうちながみねさんに呼ばれて「画鋲が落ちたから拾って来い」と言われた。
んなこと言ったって・・・・。
下は普通の地面だし、腐った棒切れとかもあって、当然の如く「無理です。」と答えた。
そっから以下の問答が始まったが、めんどくさいので短くする。

ながみね「探せ」
ヒバカリ「無理です」
な「探したら褒美をやる」
ヒ「褒美って何ですか?」
な「頭撫でてやる」
ヒ「・・・・・・・。」

・・という訳で、自然的に僕の中では「探そう」という考えが消滅してバンガローの下で支えている横木に寝転がった。
五分ほどまどろみ、上がっていって「あれはやっぱり無理です」と言ったが、「探せ」の一点張り。
どうにか俺人虫さんが昆虫針で代用するということでとりなしていただいた。
さて、ライトのセッティングも終わり、いよいよ採集へ。

なんか僕はトラップを仕掛けてはいけないらしく、一人になってスイーピングをやったりしていた。
成果はノミハムシ・ヒメアシナガコガネ・ナミテントウ・マルガタハナカミキリなど、微妙な虫を少々。
あと、飛んでいたクロカミキリを採ったり。


新しい5メートルの網はそこそこ活躍していた模様。
帰ってきて、チキンラーメンに生卵と薬味のネギを入れて食ったら旨かった。
ちょうどいい時間になってきたのでながみね印の水銀灯やあの発電機を抱えてセットを組み、点灯した。
まあ最初の方は最初から虫が来る訳ではないのでバンガローに引き上げる。
天気は霧がちょっとかかった小雨で、蛾の採集にはもってこいなんだそうだが、甲虫に適していないのはどうにも納得がいかん。
カタビロも狙って来たのに。
少し時間が経ち、上の様子を見に行ったが、まだ明るめでそれほど沢山の虫は来ていないので引き上げる。
が、上の水銀灯の場所からバンガローに降りる階段に、馬鹿でかいウシガエルがいた。
それを見て食欲をそそられなかったと言えば嘘になる。
もともとウシガエルは食用に外国から輸入したんだし。
※実はそれはヒキガエルであったことが発覚。
そんなこんなで俺人虫さんが顔の写真を撮ったりしているのを尻目に降りるが、どうも一人では怖い。
誰だってそう思うはず。
頼りない懐中電灯の明かりしかなくて、いつマムシやヤマカガシに襲われるか分からないんだから。
4〜5分で降りたが、バンガローには大した虫が来ていない。
とりあえず、飛来したスジコガネやコイチャコガネなどを採集する。
文化祭での展示のためでなかったらあんなの採集しないと断言できる。


その他、椅子というかただの丸太にヒトオビアラゲカミキリがくっついていたりと、だんだん盛り上がってくる。
その後、また水汲みに行って煮沸して冷ました水でカルピスを飲んだ。
オサトラに使って余ったカルピスを。
ここの水は貯め水で、直接飲むことは健康上よろしくないらしい。
そんなこんなで再びながみね印の水銀灯へ。
小さめのミヤマクワガタが転がっていた。
と、何か俺人虫さんが気色悪い蛾をうれしそうに採集している。
ハエグリシャチホコ、失礼、ハガタエグリシャチホコとかいうらしい。
そのほか色々二人で楽しくやっていたらしいが僕は知らない。
じっと立ち尽くして、珍品と思しき甲虫を探していると、何かが足に触れた。
結構力強くて、何かと思えばオオゾウムシの大型個体であった。
それを拾い上げて喜んでいると、ドサッと鈍い音が近くで聞こえて、何事かと駆けつけると、でかいミヤマクワガタが。
ながみねさんは「65ミリ程度だろう」というが、それでも僕は素直に喜んだ。
情けないことに、そいつがミヤマクワガタのオスの初採集個体となるはずだったからである。
まあそのミヤマをめぐって殺傷沙汰ゴタゴタが起こったが、事情があるので省略。
ともかく、「展足を丁寧にする」という条件付でそのミヤマを頂いた。
さて、話はミヤマを見つける前に戻るが、スクリーンは結構蛾やスジコガネなどで埋まっている。
後ろの壁にも虫がいて、その中にこんなカミキリがいた。
なんというか、くすんだ茶色の翅の真ん中よりやや後ろ辺りに黒い点があるカミキリ。
で、ミヤマを採った後邪魔にならないように遠くにいたら、ベンチに黒い大き目のものが付いていたので近寄ったらヒメクロシデムシであった。
これも文化祭での展示のために仕方なく、プライドを捨てて採った。
どうしても手で触りたくなかったので小枝を使って放り込んだが・・・。
途中で褐色の泡を吹きやがった。
おかげで毒ビンの中のティッシュが茶色に・・・。
半強制的にこれをみねやま氏へのお土産にしようと決意した。
と、そのうち発電機の音がおかしくなって・・・・・。
ついに停止した。
頑張って再起させようとしていたらオッチャンが見回りに来て、「エアーがおかしい」とか「チョークを動かせ」とかなんとか言ってて、その助言に従ったらどうにか動いた。
その他スクリーンには元祖ダニライダー(50匹はダニをつけているであろうモモブトシデムシ)やテントウムシなど色々来てたがあまり興味を惹かれずバンガローに帰った。
外から見ると、スクリーンにスズメガがいてようやく「お座敷採集」としても盛り上がってくる。
あと、これもみねやま氏へのお土産にヨツボシモンシデを採った後はデータを手帳に記す。
大した物も来ないので上に行ったら再び発電機が・・・・。
何で?
何で人間が近づいたら止まるんだよ?
さっきの助言に従ってみたが、今回は燃料切れらしくうんともすんとも言わない。
単なる燃料切れと言ってしまえばそれでオシマイだが、ヒトが近づくと調子がおかしくなる辺りに発電機の陰謀を感じた。
ともかく、どうすることも出来ないので発電機と水銀灯を抱えて降りて、スクリーンなどは翌朝撤去することになった。
で、二人が発電機と戦っている間に、今度はミヤマの小さい奴が歩いているのを見かける。
コイツって、さっきながみねさんが全力投球した奴じゃなかったっけ?
何で戻って来てるの?
結局水銀灯はバンガローの電源に接続して、俺人虫さん持参の、虫がほとんど寄って来ていなかったハロゲンの電灯と交換した。
ハロゲンはどうなったかというと・・・
室内灯に成り下がってもうた。合掌。
さて、これからは完全に「お座敷採集」である。
思えば一番の目的はシンジュサンとドウキョウオサムシを採ることであったが、まだシンジュサンが来ていない。
まあいいや。
来たって僕の取り分が無い事は前から決まってたし。
後は適当にヒゲコメツキとかを摘みながらまどろんでいた。
あまりにも眠いので、「仮眠」と称して10分ほど眠る。
外は相変わらず碌な甲虫が来ない。
しかも、どんどん寒くなってきている。
鳥肌が立つほど寒い。
あまりにも退屈であまりにも寒くてあまりにも眠くてあまりにも空腹なので、チキンラーメンの2杯目を食ってからながみねさんののオサトラのフライングに行った。
最初はなぜかカマドウマが入っていたが、次はクロナガやアキタクロナガやヤマトなどが入っている。
ある程度奥まで行くと、さすがに怖いので引き返す。
と、何かが光った!
どうやら蛍らしい。
こんな「野生」の蛍ははじめて見た気がする。
という訳で、早速近くで光っている枝をスイーピングしてみた。
ライトで照らしてもらうと、目立つ風貌なのですぐに分かった。
どうもヒメボタルらしく、かなり小型。
で、俺人虫さんに至っては手づかみで採って、それを一匹頂いた。
毒ビンに入れるには勿体無いと感じたので掴んでいたら、一匹落ちた。
何せ光るのですぐに場所は分かるが、小さいので摘みにくい。
結局ライトで照らしていただいていたら、傍を小さい赤いゴミムシが通った。
ながみねさんは「お、メクラチビゴミムシ」って感じで喜喜としてキープしたが、「お、メクラチビゴミムシ」と言われても一瞬ではピンと来ない。
ようやくその言葉を理解して、「え?あの目がない洞窟性の奴ですか?」と聞いたらそうらしい。
どんだけ珍しいのか分からないが、僕の中ではメクラチビゴミムシは「まあまあ珍品」というイメージだったので純粋に羨んだ。
結局これ以上目ぼしいものはいないので、ライトをつけっ放しにして就寝。
電気代はキャンプ場側が持つんだから、余分な出費の心配もない。
起きたのは6時。
タオルケットをかぶって寝ていた気がするが、実際にかぶっていたのはながみねさんだった。
俺人虫さんの姿は見えない。(後で、二階で寝ていたことを知った)
暇なのでちょっとオサトラを見に行ってみた。
昨日はカマドウマしかいなかったコップにヤコンらしきオサムシが入っている。
他は空っぽか、外道を中途半端にミキサーにかけたような状態だったが、代わりに溝にこんなのがいた。
優に30センチはあると思われ、しかも全身が鮮やかなブルーのミミズ。
シーボルトミミズというらしい。
シーボルトだろうがシューベルトだろうが気色悪いことには変わりない。
という訳で、早々に立ち去った。
二人とも起きないので、ベランダのスクリーンを見てみるが、特に珍しそうなものは無く、カブトムシのメスが余計に空間を占領しているだけである。
退屈過ぎるので二人を起こし、オサトラの回収に行った。
結果、ヤコンらしきものが一匹と、ヤマトオサムシらしき奴が数匹。
森の中は、エゾハルゼミか何かの鳴き声に満ちていてなかなか清々しい。
で、帰りがけの昨日放置したスクリーンなどを回収して、バンガローを掃除したり各自の荷物をまとめたりした。
その際食器にくっついているところを発見されたキンウワバ(↓)。
逮捕されて牢屋(毒ビン)に収監された。
片づけが終わると、ちょっとだけスイーピングをしてみた。
何かマルガタハナが入っていて、ちょっと得した気分になる。
さて、いよいよここから引き下がって帰る訳だが、帰りは発電機を積んでもいいか分からない。
とりあえず、ガソリンが無くて使えないということをアピールしてみたが、「ちょっと入っていますよ」と言われて必死に「あ、ホンマや。でも少なすぎるなあ」みたいなことを言ったらどうにか乗せてもらえた。
下に降りると時間があまり残っていない。
慌てて発電機を転がしていくが、余裕で間に合わなかった。
次のバスは一時間後なので、そこらで花を掬ってみる。
が、中身は上と大して変わらない。
結局塀に乗っていたミヤマクワガタをキープしただけに終わった。
その後、間違いなくバスに乗って大阪で解散。



 

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